排尿障害
- Category:泌尿器科の主な病気
腎臓で作られた尿が膀胱に貯まることを蓄尿、貯まった尿が体外へ排出される事を排尿といいますが、膀胱や尿道、蓄尿排尿を調整する神経の障害によって起こる蓄尿および排尿の異常を排尿障害(下部尿路機能障害)といいます。
*正常の排尿とは*
・1日尿量 1000~1500ml(20~25/㎏)
多尿 >40ml/㎏
・1回排尿量 200~400ml
・1回排尿時間 20−30秒
・夜間尿量 1日尿量の約20%
夜間多尿 高齢者>33% 若年者>20%
・1日排尿回数 4−6回/日
・夜間排尿回数 1回以下
【蓄尿期】
1.ある程度の尿が膀胱にたまると尿意を生じる
2.尿意を生じてからもある程度我慢できる
3.十分な量の尿を蓄えることができる
4.尿失禁はない
【排尿期】
1.排尿を意図すればいつでも排尿できる
2.排尿に際し特別な努力を要しない
3.排尿中尿線をある程度中断できる
4.残尿はない
排尿障害の症状は主に蓄尿症状・排尿症状・排尿後症状の3つに分類されます。
①蓄尿症状:
頻尿、尿意切迫感、切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁、夜間頻尿、夜尿症
②排尿症状:
尿勢低下、尿線途絶、腹圧排尿
③排尿後症状:
残尿感、排尿後滴下
これらの障害が起こる原因は様々です。
代表的な原因としては男性では前立腺肥大症、女性では加齢・出産の影響で膀胱や子宮を支える骨盤底筋の脆弱化による腹圧性尿失禁(お腹に力が入って尿が漏れる事)、男女ともに過活動膀胱などが挙げられます。
また脳血管障害や糖尿病、脊髄疾患がある場合にもこのような症状を呈する事があります。診断・治療には以下のような診察が必要になります。
問診:
既往歴や排尿の状況や飲水過多、カフェインの過剰摂取などがないか、就寝前に水分摂取しすぎていないかなど、排尿トラブルの原因となりそうな生活習慣などがないか問診します。
排尿日誌:
自宅でのコップで尿量をはかっていただき、記入してもらいます。1日尿量、夜間尿量、1回排尿量、1日排尿回数など調べます。
問診票:
OABSS、IPSSなど現在の排尿状態、満足度を点数化します。
検査:
尿検査:
尿路感染の有無を調べます。
超音波検査・残尿測定:
前立腺肥大症の有無や排尿障害を示唆する所見(膀胱の壁が厚くなっていないかなど)、排尿後の尿の残りがないかどうか等を調べます。
尿流測定:
尿流測定器に普段通りに排尿をしていただき、尿量や排尿にかかる時間、尿の勢い、二段尿の有無(一度排尿が終了した後,間もなく尿意を感じて再び排尿すること)を調べます。
膀胱内圧測定:
膀胱に尿をためながら膀胱内の圧を調べたり、排尿するときの排尿筋圧を測定したり、不随意収縮(自分で意図していないのに筋肉が動く事)がないかどうかを調べます。
膀胱にカテーテルを入れ、肛門内にも測定用のカテーテルを入れ、膀胱に尿をためたり、排尿してもらったりして膀胱機能(尿を貯める力・尿を出す力)を調べる検査です。
治療:
内服治療や手術療法など原因疾患によって治療は様々です。原因に応じた治療を行います。
<前立腺肥大症>
前立腺は男性にしかない臓器で、膀胱の真下に位置し尿道を取り囲むように存在します、栗の実のような形と大きさをしています。役割としては精液の一部分を作り、射精や排尿の調節に関わっています。
前立腺肥大とは、前立腺が正常より大きくなることをいい、尿の通り道を圧排することで様々な症状を引き起こすことを前立腺肥大症と言います。
この前立腺肥大症には男性ホルモンが強く関与していると言われています。
症状
- 残尿感:尿が残った感じがする
- 頻尿・夜間頻尿:尿が近くなる
- 尿勢低下、尿線途絶:尿の勢いが弱い。尿が途切れる
- 尿閉:おしっこをしたいのに全く出せなくなること
検査/問診
IPSS問診表を用い排尿の状態や満足度を評価します
直腸診:
肛門から指を入れ前立腺を触診し大きさや硬さを調べます。
超音波検査・残尿測定:
前立腺の大きさや、排尿した後の残尿量を測定します。
尿流測定:
尿流測定器を取り付けた便器に普段通りに排尿をしていただき、尿量や排尿にかかる時間、尿の勢い、二段尿の有無(一度排尿が終了した後,間もなく尿意を感じて再び排尿すること)を調べます。
治療
1. 薬物療法
主にα受容体遮断薬という薬を使用します。尿道や膀胱の筋肉の緊張を緩め、排尿症状を改善させます。その他に男性ホルモンを押さえる抗アンドロゲン薬やホスホジエステラーゼ阻害剤、抗コリン薬などを併用する事もあります。
2. 手術療法
薬物療法で改善がない場合や、中等症から重傷の前立腺肥大症、残尿が多い、
尿閉を繰り返す場合などは手術療法も考えます。
TUR-P:経尿道的前立腺切除術
内視鏡を尿道から挿入し、電気メスで前立腺を内側から削る手術方法です。
TUEB:
TUR-Pと似ていますが、内視鏡を尿道から入れ、電気メスを用いて前立腺の一部を内側からくり抜きます。
<過活動膀胱>
尿意切迫感を主症状とし、これに頻尿や切迫性尿失禁を伴う症候群のことで、症状を引き起こすような原因疾患(膀胱腫瘍や膀胱結石、子宮内膜症や前立腺がん、膀胱炎などなど)がある場合にはそれに対する治療が必要となります。
現在では40歳以上の男女の12%が過活動膀胱と診断されており、高齢者になるほど有病率が高くなります。
症状:
3大症状は尿意切迫感・切迫性尿失禁・頻尿です。これらの症状のうち、尿意切迫感は必須症状になります。
検査:
尿検査や超音波検査、必要によっては膀胱鏡検査等でこれらの症状を起こす可能性のある疾患を除外しなければなりません。
問診表:
症状を点数化し、軽症〜重傷まで分類します。
<OABSS:過活動膀胱症状質問表>
以下の症状がどれくらいの頻度でありましたか。この1週間のあなたの状態に最も近いものを選んでください。
治療:
1. 行動療法:
膀胱訓練(尿意を感じてから排尿するまで少し我慢し膀胱に尿をためるたり)、生活指導(飲水制限など)
理学療法(骨盤底筋体操など)
2. 薬物療法:
抗コリン薬:膀胱の緊張を緩めるような働き
副作用として口渇や便秘があります
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