『Neoplasia』に黒田庄一郎 先生の大学院研究成果の論文が掲載されました
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黒田庄一郎 先生の大学院研究の成果をまとめた論文が、Neoplasia誌に掲載されました。
熊本大学泌尿器科研究室のメンバー、特に馬場理也先生、西澤秀和先生の熱心なご指導の賜物です。心から感謝申し上げます。
本論文の要旨は以下のとおりです。ご興味のある方は是非、ご一読ください。
TFE3再構成型腎細胞癌(TFE3-RCC)は、発癌性のTFE3融合転写因子によって駆動される侵襲性の高い腎癌である。しかしながら、これらの融合タンパク質がどのような分子機構によって転写プログラムを再構築し、腫瘍増殖を促進するのかについては十分に解明されていない。
本研究では、Cyclin C-CDK8/19からなるMediatorキナーゼモジュールが、TFE3融合によって駆動される転写プログラムおよび腫瘍形成における必須の共調節因子であることを同定した。正常腎上皮細胞由来の不死化細胞株であるHK-2細胞においてPRCC-TFE3を誘導発現させると、強いオンコジーン誘導性細胞老化(OIS)表現型が引き起こされた。OISを機能的指標として、ゲノムワイドCRISPR/Cas9による機能喪失スクリーニングを実施した結果、Cyclin CをコードするCCNCが、PRCC-TFE3活性に必須の遺伝子として同定された。
さらに、CCNCの遺伝学的破壊またはCDK8/19の薬理学的阻害により、PRCC-TFE3によって誘導されるOISは消失し、MediatorキナーゼモジュールがPRCC-TFE3依存的転写における重要な補助因子であることが示された。機序的には、PRCC-TFE3はCyclin Cの核内蓄積を促進し、PRCC-TFE3によって結合および転写活性化されるゲノム領域において両者の共占有が認められた。
RNAシーケンス解析により、リソソーム関連経路、TFEB関連経路、代謝経路を含むPRCC-TFE3誘導性転写プログラムが、CDK8/19阻害により広範に抑制されることが明らかとなった。重要な点として、PRCC-TFE3とCyclin C-CDK8/19は非腫瘍性腎上皮細胞においてOISを誘導する一方で、同一の転写軸がTFE3-RCCにおいては文脈依存的に腫瘍促進的機能を発揮することが示された。
患者由来TFE3-RCC細胞株から樹立した異種移植モデルにおいては、CCNCの遺伝子欠失により腫瘍増殖が抑制された。また、同所性同系TFE3-RCCマウスモデルでは、CDK8/19の薬理学的阻害により腫瘍進行が有意に抑制された。
以上の結果は、MediatorキナーゼモジュールがPRCC-TFE3駆動型TFE3-RCCにおける分子機構上および治療標的としての脆弱性であることを示しており、作用機序に基づく標的治療の合理性を提供するものである。
