慢性腎不全

腎臓のしくみと働き

腎臓は両側の腰のあたりに一つずつあり、大きさは握りこぶし程度、重さは1つ150g程度の臓器です。

腎臓には大きく分けて2つの働きがあります。1つは尿を作ることにより、尿毒症の原因となる老廃物を排泄したり、体の水分バランスを保ったりする働きです。もう一つはホルモンを作ることによって血圧や貧血、カルシウムやリンなどの電解質を調整しています。

慢性腎不全

慢性腎不全とは数か月~数十年という長い年月をかけて腎臓の機能が徐々に低下し、回復できない状態になることです。腎臓の機能が悪化するにつれて体内に毒素がたまる『尿毒症』という状態になり、また、体に余剰な水分もたまってきます。そのために、頭痛、倦怠感、食欲低下、吐き気、むくみ、呼吸困難などの症状が出てきます。このような状態が長く続くと生命を維持することが難しくなってくるため、末期腎不全になると透析療法や腎移植が必要になります。

末期腎不全に対する治療法

末期腎不全の治療法には腎臓の働きの一部を補う腎代替療法と呼ばれる血液透析、腹膜透析、また、唯一の根治的治療法である腎移植の3つがあります。

①血液透析

血液透析療法は、透析の機械を用いて血液中の老廃物や不要な水分を除去して血液をきれいにする方法です。

②腹膜透析

腹膜透析療法は、おなかの中に透析液を注入し、自分の腹膜を利用して血液をきれいにする方法です。

③腎移植

腎移植は、ほかの人の腎臓を体の中に移植し腎臓の機能を回復させる方法で、唯一の根治的な治療法になります。

泌尿器科では血液浄化療法部と協力し、血液透析、腎移植を行っています。この2つの治療についてご説明します。

【血液透析】

血液透析とは

血液を体内から体外へ取り出し、ダイアライザーと呼ばれる人工腎臓を使って血液中にたまった老廃物を取り除き、水や電解質のバランスを整え、きれいになった血液を再び体内に戻します。血液透析に要する時間は通常145時間、週3回が基本です。

当院では他院で血液透析されている方が入院された際の血液透析を行ったり、これから血液透析を開始される患者様の血液透析導入を行ったりしています。他の維持透析病院では、通常の日中の維持透析以外に、仕事がある方のために夜間透析を行ったり、通常の腎臓の働きに近づける目的で長時間透析や頻回透析、夜間眠っている間に行うオーバーナイト透析を行ったりしている施設もあります。

全腎協HPより抜粋

内シャント

血液透析を行うには1分間に約200300mlの血液を体外に取り出し、ダイアライザーに送る必要があります。通常の血管ではこれだけの血液流量を長時間確保することができません。このため、血流量の多い太い血管が必要となります。そこで、一般的には利き腕の反対側の腕の手首に近い部分で内シャントと呼ばれるものを作成します。シャントは手術によって静脈と動脈をつなぎ合わせたもので、動脈から直接静脈へ血液が流れるため、静脈が発達し太くなり、血液透析を行うのに必要な血液流量を確保できるようになります。シャントの手術は局所麻酔で行います。

その他のブラッドアクセス

内シャントなどの血液の出入り口のことをブラッドアクセスといいます。ブラッドアクセス作成の際には感染などの問題から、まずは出来るだけ自己血管を用いた内シャントを作成するようにしています。しかし、血管が細く内シャント作成が困難であったり、心臓の機能が悪く、内シャント作成により、さらに心臓の機能の悪化が予測される場合は上記の内シャント以外のブラッドアクセスが必要となります。

①人工血管

内シャント作成に適した血管がない場合に人工血管を用います。

人工血管を皮膚直下に留置して動脈と奥に隠れた静脈とにつなぎます。

人工血管に穿刺し、透析を行います。

人工物を用いますので感染に注意が必要です。

②動脈表在化

シャント作成により心機能の悪化が予想される場合に行います。

そのままでは穿刺がしにくい動脈を深部から皮膚の直下に持ってきてバスキュラーアクセスとして使用できるようにします。

表在化された動脈より体外に血液を取り出しますが、返血用の比較的太い静脈が必要となります。

③長期留置型カテーテル

上記①②ともに困難な場合には、長期間留置できる透析用の太いカテーテルを留置することがあります。

人工物ですので感染に注意が必要です。また、カテーテルの閉塞などによりカテーテルの交換が必要になります。

泌尿器科では内シャント作成を含め、上記ブラッドアクセスを患者さんの状態に応じて作成し、血液透析の導入を行っております。また、狭窄、閉塞や感染などブラッドアクセスにトラブルが生じた場合の対応も行っております。