低侵襲手術と手術実績

現代の医療は、ただ単に病気を治すことだけではなく、身体への負担をできるだけ軽くし、そのうえで効果的な治療を行うという低侵襲医療を目指す時代です。

泌尿器科における低侵襲手術としましては、従来よりも小さな切開創で行う開腹手術(小切開手術)や、腫瘍に治療用の針を刺して、焼灼したり凍結させる治療なども含まれますが、ここでは、以前より行われていた開腹手術にかわり普及してきた腹腔鏡手術、さらに手術支援ロボットを用いた腹腔鏡手術についてご説明いたします。

腹腔鏡手術ですが、皮膚に小さな穴をいくつか開けて、内視鏡を入れてテレビ画面におなかの中の映像を映し、手術用の道具(鉗子:かんし)を、おなかの中に入れて行う手術です。開腹手術に比べて創が小さくてすむために痛みが軽く、術後の回復が早く身体への負担が少なくなるだけでなく、内視鏡により奥深い場所も詳しく観察でき、レンズで拡大してみることもでき、繊細な手術が可能となります。またおなかを膨らませるための炭酸ガスの影響で出血量が少なくなることもメリットです。

腎臓、前立腺、副腎、膀胱、尿管など、あらゆる泌尿器臓器の疾患が対象となりますが、疾患の種類や、患者さんの状態では腹腔鏡手術が行えないこともあります。

最近3年間の実績は腎臓関係(腎摘除、腎部分切除、上部尿路上皮癌手術、腎移植の腎採取手術)が年間3545件、副腎関係(副腎摘除)が年間20件、膀胱関連(膀胱全摘)が年間69件、その他では腎盂形成手術、尿膜管手術等が年間5件ほど行われています。

開腹腎摘手術の創(例)

腹腔鏡腎摘手術の創(例)

手術支援ロボットを用いた腹腔鏡手術に関してですが、すべての手術の中で、泌尿器科の前立腺癌根治手術、腎癌(腫瘍が7cm以下のもの)での腎部分切除手術でのみ、ロボット支援下腹腔鏡手術が保険診療で可能となっております。

ロボットといいましても、ロボット自身が自動的に動いて手術を行うものではなく、術者が行う動作を正確に患者さんの身体の中で再現するもので、あくまで手術支援ロボットです。これが非常に優れたシステムで、術者は10倍に拡大できる視野や遠近感のある3D画像を見ることができ、自分の手と同じように手先が動く手術鉗子を使うことにより自在に切開したり、縫合したりすることが可能となりました。

当院では20136月に手術支援ロボット「ダヴィンチSi」を導入しています。これまでの実績は、ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術が250例、ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術は2016年より保険診療認可されたため10例です。今後もますます対象疾患が増えていくと予想されます。

  

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